すしログ 〜The Encyclopedia of Sushi〜

寿司、鮨、鮓…スシに魅せられた男のブログ。鮨が大好きだ!と確信して以来、全国に及ぶ食べ歩きを行っております。江戸前鮨ではシャリの美味しさと仕事との調和を重視。鮨と密接な関係にある日本料理や郷土料理の名店も紹介。実は若輩者ですが向学心と感謝の念を忘れずに続けていきたいと思います。

すしログ No. 100 亙(ノブ)@淡路島(兵庫県)

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鮨好きの友達が風の噂で聞きつけた、淡路島にある情報の少ない鮨店。

食好きの方が海を越えて通うという鮨店が淡路島に!?と関心を抱き、

この度、鮨を食べるためだけに淡路島に渡りました(笑)

 

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お店はロードサイドにあり、情報を聞いていなければ素通りしていたかもしれません。

しかし、打ち放しコンクリート、木柱、濃紺の暖簾のコントラストが、

妙に美学を感じさせ、お店の前に立った瞬間、心が軽やかに踊りました。

 

中はゆとりのある配置で、カウンター席の数は8席。

カウンターの設えや俎板は街場寿司然ですが、シャリは藁櫃で管理されております。

見れば山葵もこまめにすり下ろされており、鮨には鮫皮でおろし、

お造りにはおろしたものを包丁で叩かれております。

 

お造りでも、握りでもタネは同様とのことでしたので、

握りのみで頂きました。

都合18貫と玉子を頂くことになりましたが、結論から言って、

唯一無二の個性を持つ、稀有な存在の鮨店でした。

 

タネはほぼ「生」で構成され、冒頭から白身魚が6連発。

食感、香り、旨味の妙なる協奏に、度肝を抜かれました。

「生」なのにシャリと一体化させ、ストーリーを構築しており驚きます。

シャリは塩分、酢ともに控えめなのですが、ハラリとほどける良い硬さ。

ご主人の握りは正確で、手を打ち鳴らすことも、捨てシャリもされません。

さらに、煮キリをくぐらせてから握られ、酢橘を多用されるのですが、

これが独自の仕事となっております。

柑橘類の多用は個人的な好みではありませんが、こちらは全く嫌味にならず。

完成度の高い白身魚の仕事です。

 

まずは、【鱸(スズキ)】、【鯛(タイ)】、【鰈(カレイ)】。

冒頭の【鱸】は甘みのインパクトが強烈でした。

そして、間髪入れずに、【アコウ】。

これは高級魚のキジハタ(北陸ではナメラバチメとも)ですが、

シャックシャクな食感が極めて軽妙で、リズミカルに噛みしめると、

芳醇な甘みが口腔を満たします。

更には、【アブラメ(アイナメ)】、【イサキ】。

瀬戸内の7月の【アブラメ】は鯛の倍以上の価格となるそうです。

大阪の末廣鮓で頂いた時も旨味に喜びましたが、

こちらは生である分ストレートに伝わってきます。

 

生にもかかわらず余りにも旨味が強かったので、

「寝かしているのでしょうか?」と聞いたところ、

「熟成はしない。漁師さんの締め方(神経)が巧いから、旨味が強い」のだと。

実に巧い締め方と手当です。

熟成は食感を失う諸刃の剣。

最近の流行となっておりますが、食感と旨味のバランスという観点では、

職人のセンスが試され、過剰な熟成は食感という大きな魅力を損ねるものです。

ほどほどであれば「熟成」は「新たな江戸前仕事」かと思いますが…。

そういった意味では、熟成の対極にあるのが、こちらのお店。

食感を活かし、旨味を活かし、「鮨」たらしめるこちらの握りには驚きました。

 

そして、白身魚を締めくくるのは、長物の【鱧(ハモ)】。

火入していない生の鱧を、提供の直前に骨切りを行い、わずかな胡麻と合わせる。

これが絶品で、ハッキリ言って火を入れたものよりも旨い。

とろんととろけ、舌を撫で、旨味が長らく響きます。

 

この後は、以下のように続きました。

 

【剣先烏賊】

細かい包丁が奏功し、烏賊の甘みを素直に提示します。

 

【縞鰺(シマアジ)】

脂がギンギンに乗っており、破天荒な旨味。これは後から煮キリ。

 

【箸休め】

沢庵、キュウリ、ガリ、大葉を細く切り、穴子を混ぜて、蓼を添える。

 

【鮪赤身】、【鮪大トロ】

鮪は東京で頂くものに比べると、ご愛嬌…。

また、鮪については熟成を掛けたほうが確実に美味しいかと思います。

 

【車海老】

茹で上げを炙る。香ばしくジューシー。

 

【タイラギ】

極厚に切り付け、炙る。

 

【鮑】

豊かな食感で中々芳醇。肝添え(生でなく身とともに炊いたもの)。

 

【蛸】

巨大な切り付けだが、波を打たせており、ゆるやかに切れる。

僅かな梅肉が甘みを引き立て、吸盤の食感が良きリズムに。

 

【雲丹】

淡路産(上記も殆どが淡路産ですが)。極薄切りにした烏賊を上に添えて。

透き通るような烏賊のヴェールに雲丹が蠱惑的に微笑む。

見た目だけでなく味わいも調和し、雲丹は飲み物のように甘く喉に溶けてゆく。

 

【穴子(焼き)】

半身を丸付のように握る。絶妙。

 

【穴子(煮)】

爽煮。これも半身。しかも、胡麻を少量噛ます。

ご主人は話の途中で「仕事は苦手やから生なんですよ〜」と仰っておられましたが、

全くそんなことはありません(笑)

 

【出汁巻き玉子】

作りたて、熱々のふんわりを。

 

トータルで18貫、箸休め、玉子を頂き、 14,000円を切りました。

いやはや、情報が少ないものの、素晴らしい名店に出会うことが出来ました。

食べログでは3.3を切っておりますが、美食のためなら足を使うべしという好例です。

味だけでなく、ご主人の接客も印象深く、

神戸からわざわざ足を運ぶお客さんも多いという理由に納得です。

「歌って踊れる鮨職人になりたい」とはご主人の談。

その言葉とは裏腹に、実直な鮨と俎板を拭く都度さらしを切って使用されている姿に、

真摯な心意気を感じました。

これからの更なる進化を心から願いたいと思います。

 

店名:すし屋 亙

酢飯の特長:塩分、酢ともに控えめで、甘みはなく、ハラリとほどける。

予算の目安:12,000円〜16,000円

最寄り駅:なし、車

TEL: 0799-62-4040
住所: 兵庫県淡路市志筑1871-5
営業時間:11:30~13:30、17:00~20:30

定休日:火曜

 

ご参考になりましたら幸いです!

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