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すしログ 〜The Encyclopedia of Sushi〜

寿司、鮨、鮓…スシに魅せられた男のブログ。鮨が大好きだ!と確信して以来、全国に及ぶ食べ歩きを行っております。江戸前鮨ではシャリの美味しさと仕事との調和を重視。鮨と密接な関係にある日本料理や郷土料理の名店も紹介。実は若輩者ですが向学心と感謝の念を忘れずに続けていきたいと思います。

すしログ日本料理編 No. 36 京味@新橋

日本料理編 日本料理 店鋪情報 新橋 東京都

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こちら京味は、言わずと知れた西健一郎氏が率いる、東京における日本料理の砦。

こちら出身の料理人は都内で活躍される方が多く、予約困難店も少なくありません。

今まで、僕にとって京味は「憧れ」のお店であり、一見客はお断りなので、

正直なところ率先して訪問を試みようと思っておりませんでした。

偶像的存在であった所為。

しかし、お弟子さんの星野さんを訪問して以来、関心が急上昇。

星野さんの卓越した料理を頂き、師匠の味も頂いてみたくなった次第です。

そのようなところ、ありがたきお誘いを頂き訪問が叶いました。

ご厚意に、ただただ感謝です。

 

料理を頂いた感想としては、訪問された方々が言われるように「意外にも味が濃い」。

確かに味付けにメリハリが利いており、出汁も強めです。

しかし、個人的には「京料理の一般的なイメージからすると」と言う注釈付きで、

料理の構成からすると、気になるレヴェルではありませんでした。

そして、僕が感じた西さんの料理の面白さは、大きくまとめると2点。

1. ほぼ全ての食材に絶対的な個性を宿す仕事が施されている点、

2. 季節感を感じさせる食材選び、取り合わせ、構成を徹底している点。

全体を通して、僕は「意外にも味が濃い」と言うよりも、

「意外にも好みが分かれる」と言う印象を抱きました。

 

そして、僕個人としては紛れも無く琴線に触れ、料理に対して感銘を覚えました。

13品と水菓子と言う非常に多い料理数でありながら、

ノンストップで感情が揺さぶられ、

思い返すしても舌に味が蘇る、鮮烈な個性を持った料理でした。

お会計は日本酒2.3合を頂き、48,600円。

覚悟していたとは言え、自身が支払った食費としてはトップクラスです。

しかし、その半額や3分の1の金額を支払っても満足に足らないお店があるのは現実なの

で、

そのようなお店を数軒回避して伺ったと考えると、腑に落ちるように思います。

ただ、せめて3万円以内だったらなぁ…と言うのが一般人である僕の感覚で、

お店に掲げられた提灯に名を刻む政治家、スポーツ選手、著名人のように伺う事は決してありません。

まだまだ自身の味覚と見識を鍛える段階なので、

行き易い価格帯のお店を巡った後に、

またお伺いしたいと感じました。

1937年生まれの、西さん。

お元気でおられる事を祈念しております。

初訪でもそのように思わされる、人間としての魅力が溢れ出る方でした。

 

頂いた料理は下記の通りです。

写真不可で、メモも取れないお店なので、一部順序に間違いがあるかもしれません。

料理の味に関しては覚えているのですが(笑)

【先付】鱚の西京焼き、鯛と茗荷の寿司、空豆
【ずいきの吉野煮 】
【お造り】鱧の湯引き、焼き霜
【鮑とじゅんさいの酢のもの】
【雲丹と鯛の出汁ジュレ】
【揚げもの】鮑とトウモロコシ
【賀茂茄子の田楽 】
【お造り】鯛、真子鰈
【焼き物】鮎
【椀もの】グジ
【炊き合わせ】蕨の信田巻き、里芋、蛸の子、麸
【グジの潮汁】
【お食事】ハラスご飯
【水菓子】葛切り
【日本酒】天禄拝領の京味限定大吟醸、黒龍しずく

 

先付

鱚の西京焼き、鯛と茗荷の寿司、そら豆。

一見すると地味だが、季節を爽快に感じる事が出来る取り合わせ。

鱚の西京焼きは西京味噌の風味を、寿司には酢を、

そら豆には甘みを比較的強く利かせ、メリハリが付いている。

輪郭がハッキリした先付。

 

ずいきの吉野煮

ずいきは丁寧に灰汁が抜かれており、ひたすらシャキシャキとしている。

出汁は利尻昆布をバシッと利かせ、

ずいきを噛み締めるや否や力強い旨味がほとばしる。

ずいきの地の味わいと昆布の海の味わいが荒々しく協奏。

 

お造り

鱧の湯引きと焼き霜造り。

湯引きは梅肉山葵餡、焼き霜は醤油で。

これは、流石、と思わされる包丁と仕事、そして鱧の質。

肉厚ながらに厚過ぎず、脂は上品。

香りも爽やか。

京料理の夏の華である鱧を二種類の高度な技で頂く贅沢。

個人的には食感をより強く感じられる焼き霜に惹かれる。

 

鮑とじゅんさいの酢のもの

鮑は火を入れた後に細切りにして葛を打っていると思われる。

非常に個性的な仕事で、取り合わせがじゅんさいと言うのも良い。

じゅんさいは全体的に大ぶりで、ゼラチン質も瑞々しい。

噛みしめると澄んだ味わいが広がる。

水の良い土地のじゅんさいであろうと瞬時に分かる。

旬には少し早い鮑だからこそ、このような取り合わせなのだろう。

季節のある一瞬を感じさせてくれる一品。

 

雲丹と鯛の出汁ジュレ

星野さんで頂いた御料理。

雲丹のサイズが違うのは時期や料理人の好みによるのだと思うが、

味付けの面でこちらは酸味が少ない(無い)印象。

記憶によると、向こうではジュレ自体に酢橘を用いていたのに対して、

こちらでは摺り下ろした皮をまぶされていた。

また、わずかに細かい根菜(まさか超早掘りの蓮根?)を使用されており、

かすかな甘みが底を支えている。

鯛の旨味、風味の濃度も雲丹に合わされているように感じる。

 

揚げもの

鮑とトウモロコシの天麩羅。

酢のもので「もっと大きい鮑を食べたい」と言う気持ちを満たしてくれる(笑)

天麩羅の衣はサクッと揚げ、噛み締めた時に中から香りがフワッと立ち上がる。

旨味の強い鮑と甘みの強いトウモロコシで夏を感じさせる。

 

賀茂茄子の田楽

味噌の味わいだけでなく、甘みも強いものの、

それに負けない程に賀茂茄子の甘みを引き出している。

茄子を旨くするのは油と火入れ。

野菜が「メイン」に成り得る、好例とも言える一品。

 

お造り

真鯛と鰈。

真鯛は兵庫県産との事なので、淡路か。

鰈は恐らく真子鰈で、縁側付き。

鰈は鮨店で頂くものに比べると弱いが、真鯛は強い甘みと香りを楽しませてくれる。

京料理のお店で真鯛が美味しいと嬉しくなる。

名残のウドが添えられている。

 

焼きもの

鮎の塩焼きと風干し。

鮎は頭からガブッと頂き、香りを楽しむ。

肝の風味が柔らかく、脂が乗っている。

産地を伺ったところ「京都北部」との答えだったが、詳しくは由良川。

当然ながら風干しよりも塩焼きの方が「鮎らしさ」を感じるが、

二種類出されるところに遊び心を感じる。

 

椀もの

甘鯛(グジ)は一汐しているとの事。

大ぶりな甘鯛は火入れが秀逸で、ホロッとほどけ、甘みが横溢。

舌の上で溶けて消え去るような甘鯛。

吸い地が強めかな?と思うものの、頂いていると心に沁み入る。

確かに強めなのだが、絶妙な段階で止めている印象。

 

炊き合わせ

蕨の信田巻き、里芋、蛸の子、麸。

蛸の子を用いるとは珍しい炊き合わせだが、西の夏を感じさせてくれる。

子ながらに蛸の香りがフワッと漂い、美味。

里芋はころんと真ん丸に包丁を入れておられ、可愛らしい。

 

グジの潮汁

西さんから「酒蒸しと潮汁どっちがええ?」と聞かれ、満場一致で「潮汁!」。

グジに加えて本日使用された他の魚の頭、アラを用いた超絶贅沢な潮汁。

味付けは利尻昆布と塩のみ!

しかも、西健太郎氏が自ら調理される。

西氏が鍋の前に立った瞬間、

ずらっといらっしゃるお弟子さんが一斉に手元を凝視し、只ならぬ光景(笑)

西氏も鋭い目つきと素早い所作で出汁を取って行かれる。

大鍋に骨を次々と放り込み、

昆布も結構な量を惜しげも無く使用されておられ、豪快極まりない。

味わいと言えば、玄妙複雑で旨味の奔流に巻き込まれる。

尋常ではない原価率の高さが味に現れております(笑)

真鯛のお頭をほじりながら汁をすすると、至福の一言。

 

ハラスご飯と香の物

定番と言われるこちらの〆。

ハラスの強い塩気が米の甘みを強調し、コントラストが食欲を高める。

パリッと焼き上げた皮の千切りが嬉しい。

鮭は皮に旨味と香りがあるので、それを調味料的に使っているのは面白い。

 

葛切り

超極薄で、食感が素晴らしい。流麗且つ艶やか。

これも西氏の手によるものであったが、バット捌きが素晴らしかった。

と書くと、野球みたいな響きですが(笑)

ナイスバッティン!な葛切りで気持良くゲームセットでした。

 

店名:京味(きょうあじ)

食べるべき逸品:季節を寿ぐ西健太郎氏の料理。

予算の目安:30,000円〜50,000円

最寄駅:新橋駅から450m

TEL:03-3591-3344

住所:東京都港区新橋3-3-5

営業時間:昼12:00~14:00、夜18:00~22:00

定休日:日曜、祝日

 

ご参考になりましたら幸いです!

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