すしログ 〜The Encyclopedia of Sushi〜

寿司、鮨、鮓…スシに魅せられた男のブログ。鮨が大好きだ!と確信して以来、全国に及ぶ食べ歩きを行っております。江戸前鮨ではシャリの美味しさと仕事との調和を重視。鮨と密接な関係にある日本料理や郷土料理の名店も紹介。実は若輩者ですが向学心と感謝の念を忘れずに続けていきたいと思います。

すしログ日本料理編 No. 92 日の出@桑名(三重県)

桑名と言えば蛤、蛤と言えば桑名…と言えるほどに全国区のブランド産地ですが、

中でもこちらのお店は突出した人気を誇っております。

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創業から90年以上の歴史を持つ老舗であり、

『美味しんぼ』に登場した事も影響しているかもしれませんが、

1年で蛤が最も美味しいとされる6月は予約至難です。

友人複数名と電話を1時間に2,500回以上掛けて、何とか予約が出来ました(笑)

 

尚、意外にも知られていない事実ですが、一般的に食されている蛤は、

チョウセンハマグリ(在来種、外洋性)もしくはシナハマグリとなり、

ハマグリ(在来種、内湾性、=ヤマトハマグリ、本ハマ)は極めてレア。

更に、全国的に有名な「桑名の蛤」ですが、一時期は絶滅の危機に瀕したとの事。

1960年代には2,000~3,000トンあった漁獲量が、1975年頃から激減。

年間1トン以下まで下がってしまったそうです。

そこで、自治体、県を挙げて保護に取り組み、

現在は100数十トンまで回復させる事に成功した模様です。

干潟の減少や環境破壊などによって絶滅寸前にまで陥った桑名の蛤。

1990年以降、漁獲量制限に加えて、種苗生産を成功させ、

稚貝を放流する事で復活の道筋を作りました。

1993年に桑名市城南沖に、1994年に長島町沖に20ヘクタールの人工干潟を作り、今に至ります。

江戸時代からのブランドである桑名の蛤が人々の多大な努力で保護されており、

そのお蔭で頂けると言うのは、旬に頂く喜びがひとしおです。

自然の恩恵に加えて、携わる方々への恩恵も自ずと芽生えます。

 

さて、日の出さんの蛤は特に上質なモノを仕入れているご様子。

前述の漁獲量制限は2日間で1人30kgに制限されているそうなので、

上モノは自然と一流店へ流れる事となります。

こちらで使用される蛤は鍋に使用するものは3年半~5年モノで、

焼き蛤については何と9年~10年モノも頂く事が可能です。

部屋に通されるとスタンバイされており、蛤のサイズに驚く事は必至です。

 

はまぐり鍋のコースは8,000円(税サ別)で、構成は下記の通り。

先付、はまぐり鍋、蛤の天ぷら、焼き蛤(選択式)、雑炊or麺類、水もの。

 

頂いた感想としては、噂に違わず蛤については突出したクオリティです。

島根県鴨島の蛤も絶品でしたが、また異なる味わいで、心より堪能しました。

他では中々頂けない味わいで、記憶に強く残りました。

ただ、惜しむらくは調理技術が必ずしも高いとは言えない点。

先付の調理技術の稚拙さには目を瞑るとしても、

鍋のベースの出汁は蛤の魅力を引き出しているとは感じませんでした。

自身が蛤を扱う時は、必要以上に旨味を付加せず、

あくまでも蛤自体のコハク酸と風味を塩で輪郭付けるように心がけております。

こちらの出汁は昆布に加えて鰹も強めに用いており、

グルタミン酸、イノシン酸が過剰に感じました。

最後に蛤の旨味がじっくりと出た状態だと申し分無く名店と感じさせる味わいでしたが、

最初の出汁の取り方が繊細と言えない点は個人的に大きなマイナスとなりました。

個人的に最も美味しかったのは、鍋ではなく、

極力手を加えていない焼き蛤となり、これは感動的な味わいでした!

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一回目の出汁

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最終型の出汁

 

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先付

写真をご覧の通り、民宿レヴェル。

調理技術の稚拙に加えて刺身の表面が渇ききっているなど、言語道断だろう。

化学調味料も不要である。

居酒屋であっても、最初の一品でお店のセンスが分かり、

期待や喜びを大いに左右するもの。

印象のみならず味覚に悪影響を与える料理ならば、出さないで頂きたい。

 

はまぐり鍋

出汁については前述の通り。

よって、蛤自体について述べよう。

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中居さんの手による蛤の火入れはレアで、これは絶妙。

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噛み締めるとぷつっと弾け、トロトロと肝がとろけ、

しゃくしゃくした食感と共に濃厚な旨味が口腔を満たす。

甘みが強く、苦味はごくごく柔らか。

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そして、貝柱にも強い旨味がある点が印象的である。

しゃぶしゃぶの回数を増やすごとに蛤の出汁はどんどん濃くなり、

途中から他の旨味や風味を凌駕する。

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葛切り

 

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焼き蛤

蝶番を切り取ってから焼く。

その心は、焼く途中に蓋が開き、汁が溢れ出ない為。

まずは5年モノから頂いてみたところ、口の中に蛤が充満!

更に10年モノを頂くと、蛤離れしたむっちりした食感と極めて濃厚な風味、旨味に圧倒される。

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歯切れは5年モノあたりが良いが、味わいとしては唯一無二。

此処に来て頂く価値のある逸品だろう。

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蛤の天ぷら

胡麻油に米油をブレンドして揚げている。

胡麻油の風味と米油の軽妙さが相まって中々良い試み。

蛤に海苔の風味が加わり面白い。

ただ、衣が野暮ッたく、油の切れも良いとは言い難い。

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豆腐

蛤出汁を吸収しつつ、大豆の甘みと風味で抱擁する。

滋味に満ちており、最早「豆腐料理」だと感じた。

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麺かご飯(雑炊)か選択可能。

個人的に出汁を主体とする鍋の〆は乾麺がベストだと考える。

出汁に雑味や香りが混じらない由。

ただ、こちらはベースの出汁を継ぎ足されて、育てた出汁が死んだ点が残念至極。

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水菓子

まさかのマンゴープリンでビックリ(笑)

 

以上にお酒を幾つか頂き、16,000円ほど。

稀少性の高い蛤を頂ける事を考えると、

食好きな方はトライする価値があるかと思います!

 

店名:日の出(ひので)

食べるべき逸品:「復活の桑名の蛤」の中でも突出したクオリティの蛤。

予算の目安:10,000円〜

最寄駅:桑名駅から1,300m

TEL:0594-22-0657

住所:三重県桑名市川口町19

営業時間:17:00~22:00 ※季節によってはお昼営業11:30~14:00

定休日:水曜

※完全予約制となります

 

ご参考になりましたら幸いです!

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