すしログ 〜The Encyclopedia of Sushi〜

寿司、鮨、鮓…スシに魅せられた男のブログ。鮨が大好きだ!と確信して以来、全国に及ぶ食べ歩きを行っております。江戸前鮨ではシャリの美味しさと仕事との調和を重視。鮨と密接な関係にある日本料理や郷土料理の名店も紹介。実は若輩者ですが向学心と感謝の念を忘れずに続けていきたいと思います。

すしログ No. 177 日本橋蠣殻町すぎた@水天宮前

 2016年1月に初めてお伺いしたすぎたさん。

驚いた事に、ちょうど1年後の同じ日に再訪のチャンスを得ました。

前回も美しく存在感のある握りを楽しませて頂きましたが、

再訪しても前回の感動は薄れず、むしろ一層惚れ惚れしました。

 

この度、こちらのお店の魅力を一言でイメージしたところ、

「正統派ネオ江戸前」と言うフレーズが浮かびました。

タネの構成や仕事は紛れも無い正統派の江戸前。

タネの名前だけ列挙すれば、ここまでの人気店とは皆思わないでしょう。

それ程までにオーソドックスなタネとストーリー性です。

しかし、シャリにしても、仕事にしても、

親方なりのオリジナリティを加えて新たなステージと進めておられます。

伝統的な江戸前仕事が好きな自分としては、琴線に触れる。

更に、酒肴についても鮨店としてのギリギリのラインを超える事無く、

味わいの強弱を付けて楽しませてくれます。

よって、「昔からあったものの新しい形」と言う意の接頭辞Neoが頭に浮かんだ次第です。

 

シャリの出来栄えは1年前と変わらず、安定感がありました。

米酢と赤酢のブレンド比は秀逸で、赤酢を立たせ過ぎずに、

米酢100%では表現出来ないシャリを構築しております。

酸味、塩気、硬さは当世流行の塩梅。

赤酢の旨味と風味が強過ぎないため、

酸味と塩気が強過ぎなくとも感知されます。

味覚のみならず、握りの技術も高く、

左手の親指で船底を大きくつけ、シャリはググッと沈みます。

 

この度頂いた日本酒
雅山流(山形・新藤酒造店)、風の森(奈良・油長酒造)、
勝駒(富山・清都酒造場)、日高見弥助(平孝酒造)

 

頂いた酒肴は下記の通りです。

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海老芋の衣かつぎ

醤油で炒った胡麻と唐墨は海老芋の甘みに合う。

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穴子の茶碗蒸し

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穴子の香りがバシッと漂い、雄々しい味わいの茶碗蒸し。

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青森産。甘みが非常に強く、更に香りも食感も活きている。

1日程度寝かしているのかと伺ってみたところ、全く寝かせていないとの事。

そこで、何故ここまで?と言う疑問への答えは、保管する温度。

朝〆たものを発泡スチロールに氷を入れて、

「常温よりも低い」程度の温度帯で保管し、

旨味を引き出しておられるそう。

これは中々に面白い仕事。

一般的な「熟成」とは、酸素が供給されなくなった魚の体内で、

ATPがイノシン酸に分解される事。

そして、個人的に考える「熟成」の構成要素は、ごくごく簡単に言うと、

漁法と手当て(〆方、輸送方法)、水分含有量、個体の繊維質、

処理方法、保管方法、温度、湿度など。

冷蔵庫や氷冷庫で保管してイノシン酸を増大させる事を「寝かせる」と言う訳だが、

「常温よりも低い」環境で旨味をコントロールされているのは興味深い。

やはり、親方も白身魚の持ち味は「食感」と「香り」と仰っておられ、

旨味との良きバランスを研究されている模様。

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鯖の海苔巻き

先の鮃のサクでも感じたのだが、おろされた身が美しい。

包丁を入れた断面はピンク色に輝き、脂がてらてらと光を帯びる。

甘美な輝きだ。

この美しい鯖を端正に切りつけ、海苔にびっしりと敷き詰める。

そして、大葉、浅葱、ガリ加えて、巻く。

調理法としては極めてシンプルだが、

鯖の力、仕事の妙、薬味のバランスが合わさり、

もの凄いインパクトの酒肴に仕上げられている。

これぞ、あらゆる料理ジャンルの中で美味しい魚を頂ける鮨店の魅力。

鯖のクオリティは前回よりも高く、印象が非常に強かった。

また、鯖の脂を活かす為か、〆加減も穏やかであり、

総合的な調和が桁外れだった。 

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北寄貝の生姜醤油焼き

甘みを加えた生姜醤油が貝の苦味と合う。

包丁の入れ方も良く、気持ち良い食感。

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白子ポン酢

滑らかに甘くとろける白子は冬の幸せの一つ。

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筋子味噌漬け、海老の和えもの

醤油漬けよりもねっとり感が強く、風味が凝縮されている。

塩分が丁度良く、甘みの強い味付け。

海老の和えものは味噌を混ぜ込んでおり、力強い甲殻感。

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マナガツオの焼きもの

昨年は塩気が強すぎたが、今回はさっぱり!

そう言えば、昨年の牡蠣の味噌漬けも塩辛かったが、

筋子味噌漬けは補正されていた。

塩気が穏やかなので、旨味と共に風味も感じ易い。

皮に細かく包丁を入れており、割としっかり目の火入れで力強い。

 

この後、握りに移行します。

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小鰭

絶妙な〆のバランス。

食感はしっとりなのに、無駄な水分はきちっと脱水され、

酢も浸透させており、淡く軽やかな〆。

ただ単純に浅く〆るのとは訳が違う。

旨味と香りの立ち方が半端無く、これは東京でも5指に入る小鰭。

なお、一貫目に小鰭を出す理由を伺ったところ、

「最初の一貫が一番記憶に残るから」との事。

そして、「つまみからの流れをリセットするため」とも。

理に適っており、江戸前の真髄を伝えてくれる。

タネの構成=ストーリー性は非常に大切です。

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真鯛

強い印象の小鰭の後だが、圧倒的な存在感を示してくれた。

その理由は、タネの質と言うよりも、仕事ゆえ。

如何に特上の真鯛を入れたところで、魅力を引き出せない職人は多くいる。

旨味の引き出し方と包丁。

これこそが真鯛を活かす為の技。

肉厚で旨味のパンチがあるが、食感と歯切れが良い。

ほぼ寝かせておらず、軽く塩を当てているのではないかと思う。

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藁で炙り、和芥子を噛ませている。

鰆自体は8日間弱熟成させている。

故に食感はねっとりとしているが、繊維は綺麗にほどけゆき、

力強い脂の旨味、香りが追いかける。

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鮪赤身

水揚げは10日前で、戸井。184kg。

戸井は鮪を傷つけずに捕獲、輸送する事で有名な産地。

甘みがしっかりと残るが、酸味もあり、旨い。

漬け加減もバッチリで、塩気の主張が低い。

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シマエビ

標準和名で言うとモロトゲアカエビでしょうか。

トロトロと甘みが横溢し、シャリの酸味が健気に支えている。

適度な歯ごたえも気持ち良い。

立て塩をして少し寝かせているため、食感と旨味がコントロールされている。

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鮪中トロ

脂は極めて甘く、サラッと溶ける。

そして酸味もあり、好みの中トロの味わい。

部位的には血合いギシとの事。

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爽やかな香りと旨味を楽しめる。

鯖、小鰭も同様だが、やはり〆の仕事が秀逸。

個人的に杉田さんの最大の魅力は〆だと感じる。

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車海老

頭部の殻を丁寧に取り除き、限り無く味噌が失われないよう用意されている。

そこから、味噌を身の下に折り畳むような形で握られている点に工夫と技術を感じる。

車海老はレア寄りのミディアムレアに仕上げられており、旨味の伝達速度も速い。

聞けば湯には頭から入れているそうで、茹で上げ後の温度調整も抜群。

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切りつけの際、切り身によって包丁の立て方を変えており、興味深く感じたが、

二枚付けで供されて納得。

しかし、その真意が凄い。

皮は炙った後に漬けており、こうする事で皮の食感を薄められるとの事。

その試みは成功し、皮の存在感は希薄であるが、旨味として確かに主張する。

魚は皮目が旨く、香りも感じさせてくれる。

ビシッと香りを感じさせる香りの活かし方が面白く、

この力強くも上質な味わいは、今まで頂いた鰤の握りの中でも屈指である。

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キタムラサキウニ

青森ダイセン。甘みが強く、滑らかな食感で、モノは良い。

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穴子

とろろんと溶けたゼラチン質の旨味が主張し、とろけながら香りを放つ。

煮ツメは穴子と頂くと濃厚寄りだがサラッとしている印象を抱くが、

単体で舐めてみるとしっかりした穴子の旨味がある。

若手職人さんはサラッとした煮ツメを使うのが主流のようだが、

やはり煮ツメは濃くないと煮ツメではない。

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玉子

しっとりした食感で、ホロッと崩れ、しゅわっと溶けるような食感。

甘みが強すぎず、海老の風味も後半からジワジワと伝わる塩梅。

 

お酒を一人当たり2合頂き、2.5万円弱。

鮨として評価を問われる価格帯だが、個人的には大満足。

有無を言わさぬ仕事の魅力があり、季節を変えて伺いたいお店だと感じます。

 

 

 

店名:日本橋蠣殻町すぎた

シャリの特徴:赤酢を穏やかに使い硬め。塩気もやや強めなので、男らしいシャリ。

予算の目安:18,000円~25,000円

最寄駅:水天宮前駅から100m

TEL:03-3669-3855

住所:東京都中央区日本橋蠣殻町1-33-6 ビューハイツ日本橋B1F

営業時間:火~金17:30~、20:30~、土・祝17:00~、20:00~、日11:30~、13:30~、18:00~

※回転制となっております

定休日:月曜

 

ご参考になりましたら幸いです!

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