すしログ 〜The Encyclopedia of Sushi〜

寿司、鮨、鮓…スシに魅せられた男のブログ。鮨が大好きだ!と確信して以来、全国に及ぶ食べ歩きを行っております。江戸前鮨ではシャリの美味しさと仕事との調和を重視。鮨と密接な関係にある日本料理や郷土料理の名店も紹介。実は若輩者ですが向学心と感謝の念を忘れずに続けていきたいと思います。

すしログ No. 185 松野寿司@椎名町

当ブログを読んで頂いている方の中には、

ブログで取り上げるお店について、

「街場の寿司店に行かないのは何故だろう?」と

思われている方がいらっしゃるのではないでしょうか?

これに対する個人的な理由は主に4点で、
1. 江戸前鮨とは「仕事」に妙があり、生の魚を乗せたものは江戸前鮨ではない、
2. 更に、鮨の生命線はシャリなので、あくまでもシャリが美味しいお店を探したい、
3. タネのクオリティが一定のレヴェルを超えていること、
4. (混ぜ山葵、粉山葵でなく)本山葵を使っていること、
と言う考えや基準があります。

全ての街場のお店が同様ではないとは思いますが、

上記1~4をクリアしているお店となると、

どうしても価格帯が上のお店がターゲットとなってくる次第です。

 

しかし、同時に、本質的にはリーズナブルに美味しく頂けるお店を探しており、

どんどん高額化する東京の鮨業界へ冷静な目を向けている事も事実です。

もともと江戸前鮨は仕事で魚を旨くするものなので、

僕はタネの力よりも仕事の力を信じて、江戸前鮨の底力を追求したい次第です。

 

そんな中、今回出会ったお店は、一般的な街場寿司のレヴェルを凌駕し、

江戸前鮨の底力を感じさせてくれる隠れた名店でした。

わずか3,700円のおまかせで、江戸前仕事を楽しませてくれる鮨店です。

 

お店のある街は、豊島区南長崎。

手塚治虫、藤子不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫など巨匠漫画家が住んでいた

かのトキワ荘跡地からほど近い場所にあります。

住宅街のど真ん中であり、お店の外観は、非の打ち所のない街場寿司!

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「寿し」と言う表記に始まり、看板には「出前迅速」!

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お店の中もありふれたガラスのタネケースとカウンターで、実に慎ましい限りです。

情報を知らなければ、「大丈夫かな?」と思うところですが、

入店直ぐに一般的な街場寿司や飲み寿司店と異なる点を感じました。

それは即ち、店内の空気。

古めかしい建物の臭いや魚の嫌な臭いが無く、酢の香りが漂っていたのです。

僕たちの訪問に合わせてシャリを切られていた事が分かり、

不安はすぐに霧消しました。

タネケースの中を見ても、「仕事」と「鮮度」を両立させている事が判り、安心。

その上、親方は朴訥としつつ謙虚です。

「こんな雰囲気なので…」と謙遜されつつ、実直に江戸前仕事を繰り出されます。

しかも、捨てシャリをする事も、手を打ち鳴らす事も無し。

淡々と流れるような小手返しで、

左手の親指に加え右手の人指し指と親指を利かせつつ握られます。

 

シャリは一見すると米酢ですが、赤酢と半々でブレンドしているとの事。

クラシカルなお店としては珍しく酢を立たせているものの、

時間の経過に伴い酸味、香り共に落ち着き、バランスの良い味わいになります。

塩気は穏やかで、砂糖を僅かに用いほんのりとした甘みを持っております。

硬さについては比較的硬めで、粒が立っており、ほどけ加減は中々です。

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そして、ガリについても一般的な街場寿司とは一線を画し、

シャープな辛味があり、食感はシャキシャキ。

甘みがかなり抑えられており、赤酢の香りがするガリです。

街場のお店は甘酢でベッタリ甘い事が多いので、これは嬉しい。

 

前置きが長くなってしまいましたが、以下に詳細をお伝えします。

おまかせを頼み、仕事中心のタネで…とお願いしました。

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先付

北寄貝は特有の甘みと香りがあり、本山葵を使用されており、期待が高まる。

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墨烏賊

一貫目に江戸前を代表する墨烏賊とは、粋。

厚みがあるのでファーストバイトはゴワッとしつつ、直ぐにパツパツと切れる。

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しっかりと昆布〆する古典的な仕事。

食感はみっちりとしており、グルタミン酸も強めに浸透。

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海老

海老は甘酢に漬け、オボロを噛ませている

オボロと海老の甘みに対して酢の酸味が合わさり相乗効果を発揮。

海老がピンでなかった為…との事だが、これこそが江戸前の仕事也。

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鮪中トロ

クロマグロではなくメバチマグロとの事だが、実に香ばしく美味。

漬けに妙が有る。

旨味も凝縮されており、脂も程良く楽しめる。

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小鰭

しっかりと〆ており、酢も強めに浸透している。

クラシカルな仕事で旨味を封印する。

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真梶木

千葉県勝浦産で、旨味と酸味のノリが良い。

一般的に、2月中旬~3月はクロマグロよりも真梶木の方が良い。

カジキと言えばスーパーで売っている安い切り身のイメージが強いだろうが、

あれは「メカジキ」で別種となり、冷凍モノが多い。

真梶木は江戸を代表するタネで、比べ物にならない程、旨い。

これを出しているお店は古い仕事を継承しているお店か、

江戸前と向き合っている職人さんのお店である事が多い。

シーズンオフでもクロマグロを追いかける自称食通とは、実は半可通である次第。

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ヤイト

標準和名はスマ。高知県や九州で食される美味しい魚。

脂がありつつサラリと酸味が引き締めてくれる。

東京ではあまり流通していないタネを交える点は、

ストーリーに起伏が付いて魅力的。

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煮蛸

波打たせて切り付けた後に、丁寧に細かく包丁を入れる。

そして、温めてから提供。

しっかりと香りを楽しめ、蛸らしい食感が残されている。

噛みしめると旨味が立つ。

良き煮仕事。

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春子

小鰭とは対照的にしっとり、ふんわり優しい〆。

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まず、煮ツメの見た目に歓喜!

濃厚である事が瞭然であり、実際に口に触れた途端に旨味と香りが横溢する。

昨今流行の薄い煮ツメとは雲泥の差。

聞けば、穴子の煮汁に加えて、烏賊の煮汁も用いているそう。

蛤もしっかりと漬け込んでおり、クラシカルな仕事。

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穴子 追加

柔らかくも食感を残しており、これは良い!

穴子の香りも残っている。

柔らかく炊けば良い風潮が無きにしも非ずだが、

穴子の魅力である野趣に富む香りを消してしまっては本末転倒。

食感、香り、旨味を両立させる穴子こそが美味である。

こちらのみ産地を伺ったが、やはり対馬との事。

脂の含有量が多い穴子を巧く煮ており、尚更嬉しい。

本日は煮仕事が特に印象深かった。

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カジキ巻きと干瓢巻き

カジキ巻きとは珍しい。と言うか、初めて頂いた。

真梶木の爽快な旨味と海苔の風味が合う。

干瓢は濃いめの味付けで甘みを利かせ、食感は柔らかと言うクラシカル仕様。

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玉子

芝海老を用い芋は不使用。オボロを挟み鞍掛に!

この価格帯のお店でここまで古典的な玉子は初めて。

  

店名:松野寿司(まつのすし)

シャリの特徴:硬めに炊き、米酢と赤酢を半々でブレンドしたシャリ。

予算の目安:2,000円~6,000円

最寄駅:椎名町駅から450m、落合南長崎駅から950m

TEL:03-3951-3588

住所:東京都豊島区南長崎2-16-12

営業時間:11:45~14:00、17:30~22:00

※2017年3月現在は、夜のみの営業のようなので、事前にご確認ください

定休日:水曜

 

ご参考になりましたら幸いです!

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