すしログ 〜The Encyclopedia of Sushi〜

寿司、鮨、鮓…スシに魅せられた男のブログ。鮨が大好きだ!と確信して以来、全国に及ぶ食べ歩きを行っております。江戸前鮨ではシャリの美味しさと仕事との調和を重視。鮨と密接な関係にある日本料理や郷土料理の名店も紹介。実は若輩者ですが向学心と感謝の念を忘れずに続けていきたいと思います。

すしログ日本料理編 No. 93 美加登家@日原(島根県)

日本でも有数の清流として知られる高津川。

一級河川では数少ない「ダムの無い川」となり、

国土交通省調べの「清流日本一」に過去に数年間連続で輝いております。

現地に行くと、成程、確かに澄んでおり、のどかな風景と共に印象に残ります。

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その中でも、美加登家さんの鮎は高津川本流のものに絞られているのが特徴。

そして、エリア的にも日原から横田あたりまでに限定されているそうです。

高津川の支流である匹見川を好む方もおられますが、

本流と支流で味わいを変える点は鮎の面白さですね。

本流の方は旨味に、匹見川の方は香りに妙があるとの評価もありますので、

どちらが好みか食べ比べをすると面白いかもしれません。

鮎の好みは十人十色であるように感じますが、

鮎料理としての美味しさについては、こちらの美加登家さんは突出しております。

 

個人的に、鮎の魅力は塩焼きに収斂され、塩焼きこそが最高の調理法だと考えます。

最近は西洋料理、中華料理でも若手シェフが工夫を重ねて鮎の新たな魅力を引き出しておられ、

それはそれで大変美味しく、方々で楽しませて頂いておりますが、

塩焼きは鮎の妙味である香りをダイレクトに感じさせてくれる調理法であり、

純粋に肝と身の旨味に向き合う事が出来ます。

塩焼きが巧いかどうか、それこそが鮎を供する料理店の評価基準だと考えます。

そう言った意味で、こちらの焼きの技は全国でも上位に入るため、

河川ベースでの鮎を体感するならばわざわざ伺う価値のあるお店だと感じます。

ちなみに、虎屋壺中庵さん、召膳無苦庵さんの焼きも個人的に感銘を覚えるレヴェルでした。

 

とは言いつつも、こちらは塩焼き以外の料理も秀逸であり、

鮎を愛する方にとっては、終始笑顔が絶えない内容だと思います。

オーソドックスな背ごしに始まり、最後の鮎めしまで、

確かな日本料理の技術をもって鮎を余すところなく楽しませてくれます。

季節を愛でる喜びがあるお店です。

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尚、建物は1953年(昭和28年)に建てられた旅館であり、

奥には1932年(昭和7年)当時の「旧館」も残っております。

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現在は料理のみ提供されておりますが、

往時を偲ばせる雰囲気もまた、唯一無二の魅力かと思います。

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頂いた日本酒

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下森酒造・平家の里・純米吟醸、

古橋酒造・初陣・純米(塩焼きに合わせて)、初陣・純米吟醸。

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鮎酒(古橋酒造&美加登家)

お酒に鮎の旨味と風味がじわじわと滲む。

 

頂いた料理は下記の通りです。

尚、鮎は6月~8月で月ごとに味わいと香りを変えます。

下記の記事は6月中旬となる事を特記致します。

更に厳密に言うと、川の水量や天候でも食味が変わるため、

本質的な鮎の比較を行う場合、

同じ川を「毎年」「6月~8月に毎月」訪問しなければ感じ取れないのではないか?と思います。

「○○川の鮎が素晴らしい」と言うのは、

鮎の一側面である事を念頭に置く必要があると感じる次第です。

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うるか、子うるか

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子うるかは、特有のぷにゅぷにゅな食感を噛み締めれば、香りと旨味が高まる。

こちらは発酵させていないので、さっぱりした味わい。

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反面、肝を発酵させたうるかはパンチのある味わい。

ストレートな苦味が走り、鋭さがあるものの、旨味はしっかり。

鮎の香りも楽しめる。

一般的なうるかよりも塩分濃度が低いところが魅力。

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鮎の背ごし

旨味に加えて香りが強い!

香りの源泉たる肝が付いていないのに、香りを十分楽しめる。

強い甘みが舌に広がった後、苔の壮快な香りが鼻に抜け、

軽い苦味が味を引き締め、柔らかな甘みが余韻として残る。

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甘みの伝達が波状的で、非常に感銘を覚える味わいの背ごし。

繊維質のほどけも良い。

尚、使用する山葵は安蔵寺山(あぞうじさん)の麓のもの。

鋭い辛みの底に柔らかな甘みがある。

島根県と言えば「匹見山葵」も有名だが、こちらも美味。

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鮎の清汁仕立て

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吸い地は鰹、昆布、酢橘を軽く絞り、塩気は控え目。

椀種は冬瓜。

鮎は小さいが甘みがあり、冬瓜が腕に野趣を添えている。

小体な鮎の柔らかな旨味が次の焼きものへの期待を否応無しに高めてくれる。

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鮎の塩焼き

前述の通り、こちらは高津川の鮎の中でも上モノを入れている次第だが、

焼きものに使う鮎は更に厳選しているとの事。

4名で伺ったところ、20尾から8尾を選び抜いているそう。

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頂いてみると、圧倒的な旨味、甘みで、香りも強く残る。

身はホロホロ、皮はパリパリ、振り塩はベストとも言える塩梅。

高津川の鮎の美味しさと共に、卓越した焼きの技術を体感させられ、

鮮烈な印象を覚えた。

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うるか茄子

うるかの魅力がギュッと詰まった茄子の煮もの。

酒と味醂の甘みにうるかの苦味が滲んだ味の強い一品だが、

茄子の瑞々しい風味がクッションになる。

甘みと苦味のバランスが堪らない。

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残った煮汁はご飯に掛けて頂く。

ある時に常連さんが所望されて編み出された提供方法だ。

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鮎の揚げもの

こちらもうるかを用いた揚げもので、強めに利かせたうるかが油に合う。

衣はひたすらサクサクで、身はホロホロ。

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鮎の酢のもの

〆に用いる昆布の使い方が巧く、鮎の旨味が凝縮されている。

土佐酢は甘みが控えめで上品な味わいで、酸味と鮎の旨味が綺麗に馴染む。

結構強めに〆ているが、しっとりな食感を残している点も良い。

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鮎めし

鮎の香りと旨味に満ち溢れたごはん。

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一粒一粒に鮎の存在感が染みわたり、お米の甘みと鮎の風味が一体化。

たっぷり用いられた鮎は全ての骨が取り除かれている。

卓越した味わいの鮎ご飯である。

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留め椀の白味噌の塩梅も上品で、香の物も美味い。

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水菓子

青梅と氷。実に爽やかな〆となる。

 

鮎のシーズン以外は天然モノのスッポン料理や

ツガニ(=モクズガニ、上海蟹の同族異種)料理を頂けるそう。

スッポンも産地の特質を反映する素材であり、

高級店でも養殖モノが主体となっているので、いつか頂いてみたいと感じました。

敢えて訪問する価値のある名店だと思います。

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紫陽花

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津和野・亀井氏14代当主の鮎のスケッチ

 

店名:美加登家(みかどや)

食べるべき逸品:高津川本流の鮎を駆使した、ここでしか頂けない鮎のコース。

予算の目安:鮎のコースは8,800円〜、今回頂いたものは13,200円の一番上のコース

最寄駅:日原駅から1,700m

TEL:0856-74-0341

住所:島根県鹿足郡津和野町日原221-2

営業時間:11:00~19:00

定休日:毎週月曜、8月13日~16日

※完全予約制となります

 

ご参考になりましたら幸いです!

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