すしログ 〜The Encyclopedia of Sushi〜

寿司、鮨、鮓…スシに魅せられた男のブログ。鮨が大好きだ!と確信して以来、全国に及ぶ食べ歩きを行っております。江戸前鮨ではシャリの美味しさと仕事との調和を重視。鮨と密接な関係にある日本料理や郷土料理の名店も紹介。実は若輩者ですが向学心と感謝の念を忘れずに続けていきたいと思います。

すしログ日本料理編 No. 26 美栄@旭橋(沖縄県)

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こちらは琉球王朝宮廷料理の老舗であり、沖縄で最高峰に位置付けられるお店です。

創業は1957年ですが、こちらのお店もやはり、

「琉球料理を復興」することからスタートしました。

薩摩藩による搾取、明治維新による廃藩置県、大戦後のアメリカ軍政によって

琉球料理は大ダメージを蒙っており、「忘れられゆく料理」でした。

お店のwebサイトには、控えめに「豚肉と野菜を材料に少しずつ数を増やし」と記載がありますが、

昔のレシピの探求や再現には、多大な労力を要したことかと推察します。

 

建物は重厚な外観の、沖縄瓦葺きの一軒家。

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内装は昭和初期の旅館や料亭を思わせる木造建築ゆえの趣があり、

静かに語らい、料理を味わうには格別の雰囲気です。

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なお、お店に入った瞬間、独特の匂いがあり、良い意味で気になりました。

空気中に食材や調味料が染み込んだ匂いと言うか…

どことなく異国感も感じさせる、食欲をそそる匂いでした。

 

5つある部屋は全て個室となっているようで、一人であるにもかかわらず、

優雅に食事をさせて頂くことが出来ました。

この格式のお店で、関西であれば、確実に断られていたでしょう(笑)

 

料理は前日までの完全予約制で、お昼、夜ともに3つの価格帯があります。

お昼は5,000円、6,500円、7,500円、夜は7,000円、9,000円、12,000円。

折角の宮廷料理なので12,000円のコースを予約しました。

品数が異なってくるようですが、結果的には大正解でした。

 

部屋に入ると卓上には既にセッティングされております。

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箸は沖縄にあって、利休箸。

(利休箸は両端を削り尖えらせた箸で、千利休が桃山時代に考案した懐石用の箸となります)

 

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 泡盛は【与那国】を頼み、卓上の【豆腐よう】を肴に杯を傾けます。

 

豆腐よう

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こちらのものは、しっかりと漬けられており、熟成感がありつつも、

泡盛特有の苦味が極めて低い。

まろみを帯びた優しい旨味に驚く。

 

雲南百薬の酢の物

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雲南百薬とは、一般的に言われるおかわかめ。

非常にシャキシャキした食感の後に、ぬめっとしたとろみが滲み出る。

ツルムラサキの仲間ゆえのとろみだが、ぬめりは後を引くことなく切れる。

酢をやや強めに利かせ、鰹出汁を混ぜている。

これは上質な酢の物。

 

東道盆(トゥンダーブン)

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鮮やかな琉球漆器に美しく盛られた料理たち。

いかにも宮廷料理!と言ったプレゼンテーションです。

中央部分上から順に、ぽーぽー、魚の昆布巻き、飾り烏賊、その右隣は牛蒡肉詰め。

【ぽーぽー】は豚肉をすりつぶして味噌を加えた餡(油味噌)を巻いた料理。

独特の香りと強い味わいがあり、皮はもっちり。

生姜を利かせた油味噌との組み合わせが、中国の北京ダック(北京烤鸭)のよう。

【魚の昆布巻き】はメカジキを使用し、昆布は煮しめのように柔らかめ。

味わいもしっかりしており、元来は保存性の高い料理だったのかと推察。

【飾り烏賊】は包丁を入れた後に軽く茹でて火を入れているよう。酢醤油で頂く。

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また、左右に配置されているのは、琉球蒲鉾の盛り合わせ。

緑、オレンジ、黄色と、色とりどりの蒲鉾。

しかも、全て調理法を変えている。

魚はあのグルクン(唐揚としてよく出会う赤い魚)を使用しており、沖縄らしい。

緑のものは島菜(カラシナ)で着色されているとのことで、みっちりとした食感。

魚の風味が強い。

オレンジのものは人参を用い、揚げているため表面が香ばしく、

中は意外にもしっとり。

そして、黄色のものは玉子焼きのようなふんわりとした食感で、

中には敢えて気泡を作っており、噛みしめるとじゅわっと滲む。

 

なかみのお吸い物

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「なかみ」とは豚のホルモン。

名前、見た目的には粗野な印象を与えるが、実は非常に洗練されている。

出汁はキリッと凛々しい鰹出汁。

素晴らしいのがモツの下処理で、柔らかくも旨味がしっかり残っていて、臭いは無い。

また、ピパーチの使い方も抑制が利いており巧く、香りがモツの存在を引き立てる。

 

ジーマーミ豆腐

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非常にもっちりとした食感で、舌を執拗にねぶってくる。

こちらは強めの醤油に付けて頂くのだが、豆腐の甘みが程良く感じられる。

 

くーぶいりちー(昆布炒め)

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ちょこっとつまんだだけで、ねっとりした旨味と強い風味に歓喜。

昆布は極細切りにして、豚の脂を乳化させて絡め尽しているところがキモと見た。

 

ンムクジアンダギー(芋くずアンダギー)

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紅芋の甘みと香りを纏った餅。

サクッと歯切れが良く、噛みしめるとモチモチ。

塩気が効果的に紅芋の甘みを強調する。

 

みぬだる、田芋、金柑

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こちらのみぬだるは極薄で、両面に胡麻をまぶし、

味噌をほんのりと利かせているところが特徴。

田芋は表面に甘いタレを塗った上で揚げ、飴状にしている。

金柑の砂糖漬けは結構甘めで、切れ目を入れているため、

じゅわっと汁がほとばしる。

 

らふてー

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脂の抜け感、残り具合が極めて良い。

じゅわっと脂が滲むがクドくなく、とろりと溶け、流れる。

繊維は適度に食感を残し、噛みしめると旨味が広がる。

皮目のクセは控えめ。

甘みと醤油の塩梅が良く、ちょっと贅沢ならふてーとなっている。

付け合せの湯通ししたゴーヤー、鰹出汁を染み込ませたがんもも良きパートナー。

 

ミミガー

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甘みと酸味のバランスが良く、胡麻のコクがシンプルな調理の中のアクセントとなっている。

野菜はキュウリとモヤシで、ミミガーのプチップチッとした食感が楽しい。

しかし、全体的に野菜が多いかなぁと言う印象。

ミミガーを主とし、野菜をサブにした方が料理のバランスが格段に良くなる。

 

どぅるわかしー

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「田芋と田芋の茎を豚肉で練ったもの」との説明。

豆腐ようやジーマーミ豆腐と並んでお店の個性が明確に出る料理。

こちらは豚肉の旨味が田芋の甘みを凌駕し、パンチのある味わい。

豚肉を多めに使っているようだが、食感はしっとりと滑らか。

非常に完成度が高いどぅるわかしー。

島菜や蒲鉾も使用している。

 

豚飯(どぅんふぁん)

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豚出汁のじゅーしーに鰹出汁を掛けて頂く。

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鰹出汁は繊細で、鰹の香りよりも旨味を抽出した上品な味わい。

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付け合せの島人参の漬け物も美味しく、人参の香りがバッチリ!

 

黒糖かんてん

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あたかも谷崎潤一郎が『陰翳礼讃』の中で羊羹を評したかのような佇まい。

「玉のように半透明に曇った肌が、
奥の方まで日の光を吸い取って夢みる如きほの明るさをふくんでいる感じ、
あの色あいの深さ、複雑さは、西洋の菓子には絶対に見られない。
だがその羊羹の色あいも、あれを塗り物の菓子器に入れて、
肌の色が辛うじて見分けられる暗がりへ沈めると、
ひとしお瞑想的になる」

強い黒糖の香りを纏い、嫌みにならない甘みが、最後まで上品に余韻を残す。

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温かいさんぴん茶との相性も良い。

 

…ピカソはある日、市場を歩いている際にファンの女性から声を掛けられ、

「絵を描いて欲しい」と頼まれたため、30秒で絵を描いた。

そして、描いた絵を手渡し、「この絵の価格は100万ドルです」と伝える。

女性は勿論、仰天し、

「たった30秒で描いた絵に!?」と言う。

ピカソは笑いながらこう答えたという。

「30年と30秒ですよ」と。

僕はこちらの料理を頂き、同じことが言えるのではないかと感じました。

失われゆく料理を蘇えらせ、

琉球が誇るオリジナルの文化として提示されるに至った過程に、

敬意を表したい。

 

店名:美栄(みえ)

食べるべき逸品:唯一無二の琉球王朝宮廷料理

予算の目安:お昼5,000円、6,500円、7,500円、夜7,000円、9,000円、12,000円

最寄駅:県庁前駅から140m

TEL:098-867-1356

住所:沖縄県那覇市久茂地1-8-8

営業時間:12:00~14:00、18:00~20:00

定休日:日曜

 

ご参考になりましたら幸いです!

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