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すしログ 〜The Encyclopedia of Sushi〜

寿司、鮨、鮓…スシに魅せられた男のブログ。鮨が大好きだ!と確信して以来、全国に及ぶ食べ歩きを行っております。江戸前鮨ではシャリの美味しさと仕事との調和を重視。鮨と密接な関係にある日本料理や郷土料理の名店も紹介。実は若輩者ですが向学心と感謝の念を忘れずに続けていきたいと思います。

すしログ日本料理編 No. 23 草喰なかひがし@銀閣寺道(京都府)

日本料理編 日本料理 店鋪情報 京都府 摘草料理

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こちらは京都で心から訪問したかったお店の筆頭です。

かつて「京都で最も予約が取れない」と言われ、実際に予約のハードルが高く、

なかなか訪問出来ずにおりました。

この度、気合と運で予約を勝ち取り、念願の訪問となりました!

 

こちらのお店のスタイルは、

ご主人自らが山に入り食材を採る「摘草料理」となります。

ご主人・中東久雄さんは毎朝大原に山野草や野菜を採取に行かれており、

その日の食卓には新鮮で鮮やかな草花が踊ります。

「摘草料理」と言うと渋い料理をイメージされるかもしれませんが、

こちらの料理とストーリー性(料理の構成)はさに非ず。

実にバリエーションに富み、サプライズを盛り込んで構築された料理の流れは、

ご主人の闊達なトークと相まって、華やかでテンポの良いものとなっております。

野菜だけでなく、魚も肉も使われ、

最後にはお竈さん(おくどさん)で炊いたご飯と、目刺し、香の物で〆る。

料理の一品一品にもてなしの心を感じ、強く印象に残る創作日本料理だと感じます。

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素材は一級品ではありませんが、

調理技術とセンスによって唯一無二の料理に仕上げる仕事。

僕はそのような職人仕事を感じさせる日本料理が大好きなので、

こちらのお店は徳山鮓以来の大ヒットとなりました。

昨今の日本料理店に無い魅力を持っている名店かと思います。

再訪レビューもあります。

 

お店は銀閣寺の門前と言っても過言ではない場所にあり、店構えは質素。

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いや、質素というよりも京都ならではな鄙びた気品があります。

店内に入ると、美しく磨かれた漆のカウンターと、

漆喰とコンクリートを合わせた懐かしくも何処かモダンな内装が迎えてくれます。

店内に入り、清浄でキリッとした空気が心地良く感じました。

そして、着目すべきところは、客席と板場の高低差。

昨今のカウンター割烹ではフラットなお店が多いですが、

こちらは板場が数段下にあります。

ですので、料理風景を余すところなく眺められる空間です。

 

まずは、料理を待つ間にお茶が供されます。

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このお茶が旨味抜群で驚きました。

舌の奥にじゅわっと強い旨味が広がります。

 

とは言え、料理に合わせてお酒を頂きました。

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まずは、齊藤酒造の英勲。

英勲の後は、次Bクンね!うちのCクンはご飯にも合うよ!などと軽快なオススメを頂き、

ついついBクンこと山本本家の神聖、Cクンこと松井酒造の神蔵と計2.5合飲む事になりました。

 

八寸

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こちらの八寸は見た目に美しく、味のバリエーションに富んだ逸品。

一品一品が滋味に富み、少しずつ頂く喜びに満ちております。

一口一口、季節を頂いているかのよう…

菜の花は湯がいておらず、香りが抜群!苦味も爽やかで素晴らしい仕事。

大原の生蒟蒻は今日び珍しい蒟蒻の力強い味わいを楽しませてくれる。

蒟蒻の揚げ物には素揚げしたユキノシタとニワトコがあしらわれ、

山野の香りが優雅に香り、風景が頭に浮かぶような演出。

黒豆の煮しめを酒粕と揚げ唐墨をまぶしたものは芳醇な香りとコクで、

可愛らしい丸く小さな形状ながらに喉を喜ばす。

山椒をまぶした猪の焼きものはジャーキーのように旨味を凝縮、

堀川牛蒡の時雨煮と頂くと力強い野趣を楽しめる。

赤蕪と白蕪を使用した糊こぼし椿は、頂くのが勿体無い程に可憐。

炒り玉子の甘みと優雅な酸味が実に合う。

そして、最もサプライズがあったのが、蛤の飯蒸し。

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貝を開くと、土筆が顔を覗かせ、餅米に蛤の旨味が滲み、金柑が蛤の苦味を受け止める。

最後は山葵の葉をかじり、キリッと〆る。

全体として味覚の多様性と視覚的趣向に富んだ、素晴らしき八寸でした。

 

蕗の薹の白和え

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蕗の薹の苦味を大豆の甘みと香りが心地良く包み込み、

椎茸の旨味が底を支えている。

平たい蒟蒻が食感のアクセントとなり、ぷりゅぷりゅっと気持ち良い。

なお、器は伊勢の半泥子廣永窯のものを使用されており、料理を引き立てる。

 

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出汁と白味噌のバランスが絶妙な椀。

頂くと出汁が立ち、白味噌の甘みが鰹の旨味と協奏し、その後塩気が引き締める。

実にリズムのある白味噌の吸い物。

和芥子を少し使用しているところも良い。

具はトチ餅で、美味しんぼを思い出しました(笑)

 

岩魚の焼きもの

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見返り岩魚。部位ごとに調理法を変えている。

調理法を変えることで、頭の香ばしさや苦味、皮の酸味、身の甘みを顕在化。

部位ごとの味わいの違いを提示しており、面白い。

付け合せは芽キャベツ、紫蘇、堀川御坊抹茶、芹、一口こがねみかん。

一口こがねみかんに出会えるとは少し感動。

 

鯉のお造り

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身、揚げたウロコ、煮凝り、辛味大根、ナズナ、ノビル、酸葉(スイバ)。

寝かせて旨味を引き出した鯉は一般的な鯛の洗いを凌駕する魅力。

全てを混ぜて頂く、という方法を提案されるも勇気が無くて逡巡(笑)

しかし、ままよ!と試みると、これが凄い。

個々で頂くよりも遥かに圧倒的な世界観の広がりを提示される。

噛み締めた時に感知する味覚、食感の数が桁外れ。

豪奢な料理ではないのに、この感覚には驚かされました。

 

煮えばな

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ここでインターミッション。

お竈さんで炊いたお米を、柔らかくなる直前の状態で試食。

いわば、お米のアルデンテ。

水分含有率も高く、これ自体だとたくさん食べられないが、

初めて見るお米の表情がある。

僕は自宅で南部鉄器、もしくはフランス製の鋳物琺瑯鍋でお米を炊いているが、

土鍋も欲しくなってしまう(笑)

 

筍の炊き合わせ

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干した一年モノの花山椒をあしらう。

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筍の産地は物集女。ブランドとなっている山城の筍を超える産地。

柔らかさと気持ちの良い歯ごたえが同居し、噛みしめると甘みが漂い、

幼い苦味が心を翻弄する。

合わせているのは大根に餅粉か米粉をまぶして揚げたものか?

筍にうっとりし、伺うのを失念してしまった。

 

野生牛の焼きもの

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笹鰈の焼きものとの二択でしたので、北海道の野生牛を(笑)

僕は常々、日本料理店で出す肉の立ち位置についてやや否定的な立場を取っているため、

如何なものかと検証する気持ちで頼みました。

頂いてみると、炭火でミディアムレアに仕上げられた牛肉は、

どっしりした旨味と力強い香りがあり、味わいはさっぱり。

食している草のせいだろうか。

爽やかな酸味が一連のコースの中にフィットしている。

また、付け合せの和芥子が秀逸で、キレのある辛味にすっと消える香りが上品。

賞味期限8時間ほどの手製芥子とのこと。

紫人参、白菜の菜の花、ミカンジャムを添えた蕪も良き箸休め。

以上、冒頭の目論見は「モノと調理法によっては、十分に有り」という結果に。

 

畑菜、ほうれん草、干し蕨、黄かせゆばのお浸し

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出汁が素晴らしく、各素材の異なる食感が織りなす妙に一度リセットされる。

この後はお待ちかねの食事だが、綺麗な出汁で心穏やかに。

 

お食事

まずはセッティング…

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香の物、鹿肉の赤ワイン煮そぼろ、古漬けの大根と煎った大豆。

立ち込める香りが堪りません。

その後は、目刺し。

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続いて、例のお竈さんで炊いたご飯が登場し、スターが勢揃い。

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いやはや、もう、美味しいの一言。

和食の根源的な構成なのに、贅沢さを感じさせるのはお店の実力。

しかも、その後、更に異なるお米の表情を見せられる…

フランス製おこげを中東製のオイルとイギリスの塩で。

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意味はオヤジギャグなので、勘の良い人はすぐに分かるかと(笑)

山椒オイルと塩で頂くおこげが美味。

そして…

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ニューヨーク!

お米、おこげ部分、紫蘇ふりかけ、大根おろしの茶漬け。

感慨無量の〆でした。

一連の国籍ギャグをアメリカ人にも言い続け、失笑させた瞬間にご主人に惚れました。

 

水菓子

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朝採りの苺、生麩入り白酒。

 

以上、お酒を2.5合で10,800円。

信じられないコストパフォーマンスです。

東京の高級日本料理店が見落としている日本料理の美点が存在するのは間違い無いです。

日本料理の「根幹にあるもの」をセンスを以って再解釈されているのは偉業。

突き抜けた個性、変態性はいつしか芸術の領域に入ると再認識させてくれました。

ここ一年で伺った鮨店以外のお店だと、

前述の徳山鮓に加えて、縄屋、食堂ヤーンに並んで感銘を覚えました。

 

店名:草喰なかひがし

食べるべき逸品:ご主人自ら採取された山野草を混じえた摘草料理

予算の目安:お昼6,000円、8,000円のコース、夜12,000円、15,000円、18,000円のコース

最寄駅:元田中駅から1,300m

TEL:075-752-3500

住所:京都府京都市左京区浄土寺石橋町32-3

営業時間:12:00~14:00、18:00~21:00

定休日:月曜

 

ご参考になりましたら幸いです!

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