すしログ 〜The Encyclopedia of Sushi〜

寿司、鮨、鮓…スシに魅せられた男のブログ。鮨が大好きだ!と確信して以来、全国に及ぶ食べ歩きを行っております。江戸前鮨ではシャリの美味しさと仕事との調和を重視。鮨と密接な関係にある日本料理や郷土料理の名店も紹介。実は若輩者ですが向学心と感謝の念を忘れずに続けていきたいと思います。

すしログ No. 125 鮨あらい@銀座

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こちらは2015年10月下旬にオープンされた気鋭の新店です。

ご主人、新井氏は若干33歳で、久兵衛すし匠で15年間も修業されたそう。

そして、「すし匠」では中澤親方に次ぐ2番手として握ってこられたと言う凄腕。

それでいて、こちらは酒肴と握りを交互に出す「すし匠スタイル」を採っておらず、

「握り中心にしたい」という方向性だと聞き、大いに気になった次第です。

個人的には酒肴と握りを交互に出すスタイルには馴染めず、

鮨店は「握りこそが全て」だと信じておりますので…。

 

お店は銀座8丁目のビルの地階にありますが、

暖簾をくぐった瞬間に清々しい酢飯の香り。

地下ながらに雑な香りは無く、心地良い。

そして、内装も素敵。

過剰な装飾を施しておらず、

当世流行の氷冷庫を使用しつつも何処となく昔の鮨店を偲ばせる内装です。

席と席のスペースも確保されており、照明も明るすぎず暗すぎない。

じっくりと鮨に向き合える上質な空間だと感じました。

 

この度は友人3人との訪問でしたので、

「お好み」ではなく「握り中心のお任せ」で頂きました。

「酒肴はお酒1合分程度」とお伝えしました。

日本酒は伯楽星の純米吟醸からスタート。

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酒器が輪島塗のモダンな漆器で、軽さに驚きました。

ちなみに、他に頂いたお酒は会津中将、喜久酔特別純米で、計1.4合ほど。

お酒もお任せとなりますが、良いストーリー展開です。

お酒の量は細かく調整してくれるとの事で、

最後は握りのタイミングに合わせて少なくしてもらった次第です。

 

頂いた全体的な感想としては、仕事とシャリの融合に、

ご主人唯一無二の握りとなる「片鱗」を感じました。

率直なところ、未だ荒削りな部分が多いものの、

微調整されれば飛躍される事は間違いありません。

 

具体的には以下の3点が気になりました。

1. シャリの大きさ

2. シャリの温度

3. 価格

 

1については、ご主人は「昔の鮨のようにシャリを大きくしたい」との事で、

僕もこれには同意!
老舗の鮨店は一般的にシャリのサイズが大きめですが、

最近は小さく小さくなりすぎていると感じます。

なので、このような気概を持った若手の職人さんが出てこられた事は嬉しい。

非常に男前な握りです。

しかし、老舗の鮨店でシャリが大きくとも旨いのは、

シャリの味付けが穏やかである為。

こちらのシャリは赤酢を利かせ、塩分もかなり強めです。

そして、すし匠と同様に米酢のシャリも使い分けられておりますが、

米酢のシャリにも赤酢が少し入っておりました。

赤酢は米酢に比べて旨味が強い。

シャリを大きくすることで、こちらの赤酢加減では舌が疲れてしまう上に、

タネによっては香りと旨味が伝達されるまでのタイムラグが大きいように感じました。

僕は前述の通りの考えなので、

「シャリを小さくした方が良い」とは決して言いません。

ただ、タネ(その日仕入れたモノによる見極め)によってシャリの大きさをもう少し調整されるか、

サイズをキープするならば塩分をもう少し落とせば、高い次元で志が成就するかと思います。

 

2については、シャリにはかなり気を遣われているものの、

温度が明らかに高い事が何度かありました。

シャリは親方と言うよりもお弟子さんの管理によるものかと思いますが、

シャリの交換頻度が高い場合は、徹底的にケアした方がベターです。

換える回数が多いと、それだけブレが目立ち易くなるという事。

舌は鋭敏な感覚を持つ器官なので、味わいよりも温度は先に気になってしまいます。

何よりもシャリこそ鮨の根幹なので。

 

そして、3。

日本酒を1.4合ほどに、酒肴9品(内、切り身5つ)、握り13貫+巻物半分、玉子、椀で、

合計26,000円とは、極めて高額です(4人で104,000円…)。

あのさいとうさんでも同じくらいのボリュームで24,000円(お酒込み)。

青空さん(記事未投稿)は酒肴少しと18貫ほど頂いて30,000円(お酒抜き)。

おとわさんであれば16,000円(お酒込み)で頂けます。

前情報ではリーズナブルとの事でしたが、割高感が非常に強い結果となりました。

少し酷な事を言うと、

「握り中心にしていきたい」という志に対して出鼻をくじく価格設定かと思います。

握りを愛し、お好みを愛する人間としては、是非とも志の通りに極めて頂きたいです。

 

ご主人の志、心意気には同意する部分が非常に多い。

だからこそ、敢えて率直に記載し、更なる高みを目指して欲しいと願う次第です。

開店早々に人気を集め、最新号のdancyuにも掲載されている程なので、

人気が爆発する前(試行錯誤出来る内)に微調整されれば、

将来の伸び代が格段に大きくなる事でしょう。

 

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真鯛と金目鯛

頂いて熟成感が弱いと感じたところ、ご主人は「熟成ブーム」に対して眉唾との事。

これにも心から賛同!

「熟成を掛け過ぎると旨味の質が似てくる」とは、全く以てその通り。

それに加えて個人的には、「食感」を失う点も熟成の大きなデメリットだと感じます。

「熟成は江戸前鮨の新たな仕事」だと感じますが、

職人さんは熟成の過程で旨味と食感の見極めが重要で、

食べ手はブームに乗らず舌で判断する事が大切だと感じます。

前置きが長くなってしまいましたが、こちらのお造りは旨味と食感のバランスが良い。

金目鯛は2~3日寝かせるだけとの事だが、金目鯛らしい甘みが引き出されていた。

酢橘もごく僅かに使用しており嫌味にならない。

 

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ツブ貝とタイラギ

海人の藻塩と黒胡椒で頂くところが面白い。

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黒胡椒は意外にも生の貝との相性が抜群で、さらりと粋なセンスを感じました。

藻塩の海藻由来の旨味と黒胡椒の香りが貝の甘みをクッキリさせます。

 

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蛸の煮物
塩水で炊いた横須賀産の蛸。

蛸の香りが素晴らしく、食感も適度に弾力があって蛸らしい。

塩気をしっかり利かせており、酒肴向け。

しみづさんの仕事を彷彿させます。

 

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蒸し鮑

三陸産。火入れの技術は高く、柔らかく旨い。

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鮑の肝

 

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壱岐産。

これも付け合せの調味料に妙があり、濃いめの醤油煮おろし玉葱。

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鰹の風味を引き立て、鉄の余韻が清々しい。

 

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アカムツの酒蒸し

これは非常に高い完成度。

ふうんわりした身から脂が滲み、皮下のゼラチン質はぷるぷると旨い。

小さな昆布を敷き、穏やかな旨味を付加している。

 

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赤烏賊

山わさびと鰹節、葱を叩いた調味料で。

鰹節が巧い事味をまとめて、シンプルながらにハマる味わいとなっている。

山わさびの鼻に抜ける辛味も爽快。

 

この後、握りとなります。

 

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ガリ

食感はシャリシャリで、やや甘味があり、食べ続けられる味わい。

 

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一貫目が鰆とは驚きましたが、ご主人は思い入れが強いようです。面白い!

鰆の甘みとシャリの酢の酸味がピッタリ合って印象深い一貫。

スモークは掛けていないのでしょうか。

鰆らしい香りを感じさせる仕事です。

 

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墨烏賊

食感が非常に強く、好みのタイプの墨烏賊。

シャリは米粒が爽快に飛散し、米の香りを残す。

パツッと切れる墨烏賊とパラッと弾けるシャリこそが、江戸前の魂。

 

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鮪赤身

鮪の旨味、香りに対してシャリが勝ってしまっておりました。

 

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鮪中トロ

脂の甘みが強めで旨いが、これもシャリが勝つ。

ここに来て、冒頭のシャリのサイズに対する課題を感じた次第です。

 

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海老

茹で上げ。結構強めの火入れ。

折角なので、もう少し火入れを弱くしても良いかもしれません。

結局のところ、火入れは「好み」でしかありませんが、

僕の周りの鮨好きの人では、弱めの火入れの車海老ファンが圧倒的に多いです。

 

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これは悩ましい一貫

鰤の脂、煮キリのコク、大根の風味、シャリの旨味が融合し、

完成度の高いオリジナルの仕事に…なる兆しを見せている。

極めてアグレッシヴな仕事で素晴らしいのだが、塩分濃度が高いのがネック。

煮キリの味が強いので、漬けはもう少し短くても良いかもしれません。

(あるいはシャリと仕事のバランスで)

 

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小柱軍艦

海苔は青飛びでしょうか。香り高い。

しみづさんへのオマージュを感じさせる腰高な軍艦。

ただ、これも同様にシャリの味わいが小柱を超えます。

小柱の温度が低くシャリとの温度差を感じてしまう点もネックです。

 

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雲丹軍艦

青森・八戸の雲丹(小西商店)。

北海道のモノとは異なる甘み、香りが有って海苔との相性も抜群。

ご主人が好みの雲丹との事ですが、僕も好きになりました。

 

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煮ツメは少量だが、非常に濃い旨味。

これこそ、江戸前の煮ツメ!

昨今主流の煮ツメは薄すぎる。

 

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非常に印象深く巧い〆。

浅い〆で香りを引き立て、その後濃厚な脂の旨味が漂い、

シャリの甘みが鯖を更に強く印象付ける。

完成度の高い仕事。

 

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小鰭

皮の食感を比較的残した〆加減。

それでいて味わいは強いため、オボロとの相性が良い。

個人的には小鰭にオボロは不要だと思うが、ご主人の仕事は腑に落ちました。

 

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穴子(塩)

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穴子(煮ツメ)

煮ツメでは皮を表にし、とろりとした食感を強調している。

是非とも旬の時期に頂いてみたい。

 

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干瓢巻き

味付けは濃すぎずシンプルで、食感はしっかり。

シャリ、海苔とのバランスが良好で美味。

そして、干瓢巻きで〆るところは昨今の鮨店に少ないので、好印象です。

 

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玉子

卵の香り、甘みが控えめな、硬派な卵。

芝エビも主張し過ぎていない。

 

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圧倒的に濃厚な蜆汁。

量もたっぷりで嬉しい。

 

今回訪問して、ご主人の志に惹かれる部分が多かったので、

是非とも時を置いて再訪して、お好みで頂きたいと思います。

お好みであれば、12貫と日本酒1合で10,000円強との事ですので…

ストレートな江戸前仕事を進化させ、

己の握りを極められる事を心から応援しております。

 

店名:鮨あらい

シャリの特徴:赤酢、米酢二つのシャリを使い分け。硬さは申し分なく、酢、塩気ともに強い。

予算の目安:25,000円~

最寄駅:銀座駅から350m、新橋駅から440m

TEL:03-6264-5855

住所:東京都中央区銀座8-10-2 ルアンビルB1F

営業時間:昼11:30〜、夜17:00〜

定休日:2015年12月現在は無休 ※要確認

 

ご参考になりましたら幸いです!

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