すしログ 〜The Encyclopedia of Sushi〜

すべての鮨好きに送るブログ。日本料理、郷土料理、和菓子の名店も紹介!

すしログ No. 232 鮨しののめ@札幌(北海道)

札幌の某店で有り得ない程に不快な事件があり、

意気消沈していたところ、鮨好きな友人から鮨リベンジの提案が入りました。

精神的に参っていたので、どうしようかと逡巡しましたが、

結果的には大成功となり、清々しい気持ちで札幌を去る事が出来ました。

友人に心から感謝すると共に、親方に敬意を抱きました。

誠実な気持ちで握られた鮨は、人の心を癒すものだと感じた次第です。

 

ただ、誤解を恐れずに申し上げると、

実際に頂くまで不安だったと言うのが正直な気持ち。

食べログ上に北海道のレビュア諸氏のネガティヴなレビューが散見され、

訪問当時のトップ写真は松川鰈にキャヴィアをあしらったもの。

東京で修業されたと聞くが、

今の東京の店の悪い部分を吸収されたのではないか?と感じてしまいました。

(尚、食べログスコアが3.06なのは気にしないと言うか寧ろ好きなスコア帯です)

友人(レビュアではありません)の言葉と舌のみを信じて訪問したのですが、

良い意味で完全に裏切られる結果となりました。

まだ「知る人ぞ知るお店」である状況ですが、今回訪問して本当に良かったです。

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親方・中原渡さんは27歳から5年間の修行を経て独立された方。

鮨職人としては遅めの修行であり、且つ短い修業期間と言えるでしょう。

しかし、親方の握りには江戸前の確かな仕事と、

センスあるアレンジが加えられており、

生命線であるシャリの完成度も高いです。

タネには熟成を巧みに掛けており、切り付けが大変厚い。

その力強いタネを受け止めるシャリは硬すぎず。

 

それでいてお米の輪郭がある。

やややんちゃなお米かも知れないが、酢と巧く合わせておられます。

酢は飯尾醸造の3種類をブレンド。

10年熟成の赤酢プレミアムに2種類の米酢をブレンドされています。

よって赤酢の塩梅は穏やか。

酸味は割と強めだが、塩気も利かせてバランスを取れている印象。

ともに強すぎないので、食べ疲れしない配合です。

そして、温度も良い。

捨てシャリや掌ポンも無く、丁寧に素早く握られております。

山葵をかなりこまめに擂られているいるのも好印象です。

 

なお、店名は親方が東川町出身である事に加えて、

夜明けを意味する事から、「初心を忘れない」と言うメッセージが込められています。

ポテンシャルは非常に高く、今後とも応援したい親方に出会う事が出来ました。

 

この度頂いた日本酒

華味之至(しかみ)吟醸1,100円、まる田特純750円

華味之至は山形の酒米・山酒4号を使用する北海道の吟醸酒。

華やかな甘みが広がった後にアルコールのピリッとしたアクセントを感じ、

米の風味がまろやかに残る。

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酒器や器には、岩見沢のこぶ志窯のものを複数使用されている。

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冷製茶碗蒸し

余市産の海胆と秋田産のじゅんさい。

かなり滑らかな口当たりで美味い。

塩気も良い塩梅で、海胆の甘みを活かす。

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松川鰈のコラトゥーラ漬け、キャヴィア

これが件の一品。

恐る恐る頂いてみたが、理に適った調理であった。

松川鰈は寝かせて旨味を強化した上で漬けている。

それも、強めに。

身はプリプリでありつつ、熟成による柔らかさがあり、

この食感がコラトゥーラの風味に合っている。

コラトゥーラとは南イタリア産のカタクチイワシを原料とする魚醤。

故に発酵の風味があり、あたかも塩辛のよう。

よって、キャヴィアの熟成感とも調和する。

見た目は心配だったが(笑)、杞憂に終わる。

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鰯の海苔巻き

〆た鰯に葱、ミョウガを合わせて海苔で巻いている。

杉田さんのオマージュだろうか。

初訪の冒頭だったので、流石に尋ねず。

頂いてみると鰯の香りが広がり、旨味が満ち溢れる。

とろろんととろける鰯の脂を海苔がバリッ!と受け止める。

鰯の状態が良かったので産地を伺ったところ、根室だった。

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蛍烏賊串焼き

意外な時期の蛍烏賊

大ぶりでとろんと旨い。

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太刀魚酒蒸し

香り良く、身は柔らかすぎず良い感じの火入れ。

太刀魚が柔らかすぎると残念に思う次第。

強めのポン酢も合っている。

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鮟肝

奈良漬と干しイチジクをあしらう。

鮟肝は脂が非常にしっかりで、厚い切り付け。

食感は柔らかで、プリン的。

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蒸し鮑

鮑の下は肝を用いたリゾット。

同様の酒肴は鮨店に定着した感があるが、

海苔の佃煮を混ぜてオリジナリティを出されている。

海苔の佃煮は使用量が良く、巧く接続されている。

磯の香りが良い。

余韻としての香りもある。

 

60分で握りに入りました。

非常にテンポが良く、好印象です。

おまかせのお店でダラダラ出されたり、

ダラダラ飲み食いしたりするのは好きではないので。

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ガリ

甘みが割と強いが、辛みもあり、食感はしっかり。

お茶は濃く熱い。

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縞鯵

食感は縞鯵らしくバツッとしているが、少し寝かせている模様。

香りは雄々しく、旨味がグイグイと高まる。

熟成を掛けておられ、6日との事であったが、

食感や香りなどに熟成の腕を感じさせられた。

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鮪中トロ

沖縄産。

切り付けは嬉しい程に肉厚だが、包丁の入れ方が細やかで良い。

中トロは夏らしい旨味の後に、甘み、酸味が広がる。

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トキシラズ

漬け。割と長めに漬けていたが、力強い風味がある。

仕事に負けておらず、肉厚な切り付けも奏功。

バツッとした後に、しっとりとほどけ美味。、

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ノドグロ(アカムツ)

流行りのタネであるが、こちらは独自性が高い。

仕事は恐らく、熟成を掛けた上で皮目を残して切り付け、

浅葱を噛ませて握り、皮目をごく軽く炙るだけ。

非常に脂の強いノドグロであり、トロトロながらに食感もある。

しかも、脂が焦げると過剰に香ばしくなってしまうので、これは巧いやり方。

ノドグロへの上品なアプローチである。

産地は対馬との事であった。

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小鰭

しっかりした〆でありながら、香りは上品で、噛み締めると旨味が増す。

白板昆布の甘酢も嫌味が無い塩梅。

何よりもシャリとのバランスが良かった。

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アオリイカ

6日熟成で甘みがかなり高められているが、包丁で食感を生み出している。

甘み成分グリシンが最も豊富なイカがアオリイカだが、

反面、食感の緩さをどうするかが握りの上での課題となる。

こちらは肉厚に切り付けた後、効果的に包丁を入れ、

中心はとろりだが、表面にゴリッと切れるような食感を表現している。

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鮪赤身

まさかのTKG!

ご飯に生卵を混ぜ、浅葱、海苔を散らし、漬けにした赤身を乗せる。

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海胆

利尻産の本物の無添加。

ある海胆屋さんが独自開発しており、

使用している店舗は6店のみの希少品である。

ある種ナッツのような深い香ばしさが印象的で、

更にスッキリ抜ける爽やかな香りもある。

旨味は言わずもがな。

余韻に爽やかな磯の香りがあり、初夏に北海道を訪れる喜びを伝えてくれる。

掛けられた昆布塩も嫌味が無い。

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穴子

海苔で挟み、意外な形で登場(笑)

産地は対馬だろうか。

磯の香りがある江戸前や瀬戸内のものであれば海苔は不要だが、

脂の強い対馬であれば納得できる食べ方である。

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干瓢巻き

干瓢巻きを出されるとは、嬉しい。

最近の若手職人さんのお店では、干瓢巻きを出す方が非常に少ないので。

お客に干瓢巻きよりもトロ巻きを好む方が増えているのも原因かもしれないが、

個人的には鮨の煮もので重要なタネだと思う。

干瓢は甘すぎず、食感がしっかりで美味しい。

「干瓢巻きも出されるとは、良いですね」とお伝えしたところ、

「こう言う手の掛けたやつ好きなので…まあ地味ですけど(笑)」と、素敵な回答。

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玉子

甘エビを使用しており、塩気は程良く利かせ、みっちり、しっとりした食感。

スイーツぽさは低い玉子である。

玉子の香りと穏やかな甘みが好ましく、海老の香りは上品に漂う。

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しじみの味噌汁。

味噌は上品な使用量。

旨味がグイッと奥歯に広がる。

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生パイナップルとフローズンヨーグルト

 

コストパフォーマンスも高く、定点観測したいお店です。

 

店名:鮨しののめ

シャリの特徴:飯尾醸造の酢を赤1米2種類ブレンド。温度や硬さなど良好。

予算の目安:おまかせ12,000円~

最寄駅:円山公園駅から400m

TEL:011-215-4144

住所:北海道札幌市中央区南1条西22-2-15 シーズンビル2F

営業時間:17:00~22:00

定休日:木曜

 

ご参考になりましたら幸いです!

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